鶴トーク
鶴舞の未来について語り合うトークショーが、マスキャンプにて開催されました。
鶴舞に携わるという共通項のもと、世代も所属も異なる方々が集いました。
「THE FUTURE IS NOW (未来は今)」
2025年10月25日(土)13:30~
登壇者
マーロン・グリフィス
水上明彦(SFRN)
服部廉(名古屋工業大学 伊藤孝紀研究室 )
小松崎拓(STATION Ai)
(通訳 山田真理)
敬称略

「「未来の鶴舞は、どうあるべきか、どう期待できるのか」というテーマで、皆さんからご意見をいただきながらコミュケーションできるといい」というマーロンさんの挨拶を皮切りにスタート。

未来を見つめる時には、若い人を巻き込んでいくことが重要です。
最初に、若い方の視点から、大学院生である服部廉さんにお話を伺いました。
服部さんは大学で建築設計、街づくりなど建築デザインプログラムに取り組んでおり、鶴舞・千種エリアをメインに「CAN PLAY TSURUMAI・CHIKUSA」をコンセプトに活動されています。

地域の方がまちなかでスポーツをするなど、社交場のように交流の生まれる安心安全なまちづくりを目指しています。
昨年から続き三度目となる「ミズマツリ」というイベントがあり、2025年は初の試みとなるものがいくつかありました。
「ミズマツリ」とは、千石学区の盆踊りや縁日が生む賑わいが、波紋のように広がるお祭りです。イオンタウン千種さんのテナントや地域のお店も道路上に出店されました。
2025年は、新たに若宮高架下を会場としたことや、パレードを道路上でおこなうこと、さらに会場の装飾を地域の子どもたちとマーロンさんが一緒に作り上げたこと、他にも鶴舞図書館の自動車図書館など、たくさんの初の試みが実践されました。
いろいろなまちづくりの企画・実践を通して、実際に鶴舞にどうなってほしいのか試行錯誤しながら、具現化に向けて活動しています。

「以前はなんとなく課題をこなしていましたが、実際に現場に入ってみて、人と会い価値観を共有する中で「価値の作り方」を学びました。ただ派手なものを作ればいいわけではありません。
今後の製作物の理念になっていくと思います」と話してくださいました。
続いて、名古屋市中区にある「さふらん生活園」の施設長、水上さんに、「SFRN」を通して鶴舞の未来を伺いました。

「SFRN」とは、さふらん生活園の中のひとつ、屋号のようなものです。さふらん生活園に通う知的障がいをもつ方々が創り出すラグやクッキーなどの商品を扱います。
園生は「まがったもの」を作る天才が多いですが、それが個体差の価値であり、魅力であると捉えます。
以前は、「きれいに」「まっすぐに」するために、園生が創り上げた「まがったもの」をスタッフの手で「まっすぐ」に作り直して販売していましたが、それはどうなのか?…との思いから、「まがったもの」を魅力があり愛着の湧くものであるとし、長年の考え方をリセットしました。園生それぞれの好きなことやこだわり、素材に触れる気持ち良さなどをそのまま生かし愛でたところ、園生の目が変わってきました。
このありのままのものを「ゆらぎ」と名づけ、スタッフは伴奏者として園生を支えます。

障がいがあることを隠す風潮があり、障がい者は隠された存在になり、学校を卒業した後は地域のコミュニティから急にいなくなってしまうと感じます。障がいのある方が地域で暮らせるようにするにはどうしたらよいのかという思いから、二年前から年一回お祭りを開催するなど、障がいのある方が当たり前のように街中に存在し認め合い、共存できるような社会を模索しています。

「どういった形で模索されているのか、お考えをお聞かせください。」とのマーロンさんからの質問には、
「基本的には『教える』『教えられる』関係ではなく、フラットな立場を大切にしています。これをアートコレクティブといいます。
お互いをリスペクトしながら、手を動かし続けるということを維持するのが非常に難しく、今後どうしていくのかという戦略までは考えられない」とのことでした。
社会とつながるには、一人ではできません。今後もコミュニティの中で安心して共存する道を模索されていく様子が、さふらん生活園さんの未来の姿に重なりました。
続いてSTATION Aiの小松崎拓さんがお話しくださいました。
STATION Aiは、単にテクノロジーを発信するだけではなく、人と人のつながりやイベントの起点を創出する場でもあります。小松崎さんは、マーロンさんのアート×AIがどんな化学変化が起こるのか興味深いと仰います。

STATION Aiには、国内最大級である約150点の障がい者のアート作品を美術館のように設置しているアートスペースがあります。障がいのある人はものごとをこう捉えているんだ、と自由に楽しむものです。既視感や既成概念にとらわれることもありません。
他にも、カフェ会やワークショップなど、年1000回を超えるイベントがあります。入居者が積極的に企画します。
先日は岡谷鋼機さん主催の「茶会」がありましたが、STATION Aiで茶道、和服の方が近代的な小型の乗り物で移動するなど、面白いイベントで大盛況だったそうです。

大阪中之島美術館でも、茶道関係の展示がありました。古い価値のある茶碗が展示されている右側に、携行型喫茶室が併存していました。ものの価値とは何か。もしかしたら震災時にこの携行型茶室が使えないだろうか、震災のような非常時において、人によってはこの茶室は古い茶碗よりも価値があるかもしれません。価値とは、人やものによって変わるものであると感じたそうです。
マーロンさんからの「STATION Aiでのアート作品の展示で、ものの捉え方や刺激になることなど、変化してきたことは感じますか?」との問いには、
「ある一枚の絵を見て、劇的に変わることはそうそうあるものではないと思っています。ただ、自分が意識していなくても、変わることはあると思います。ふとしたきっかけで、変わることがあるかもしれません。」と教えてくださいました。

その後は、参加者も交えて、意見や感想を語り合いました。


長年、市役所で橋など大規模建設に関われてきた方からは
「橋などハードなもの作りは、心の豊かさにはつながらない。顔が見える関係を築き、人々の笑顔を積み重ねる街づくりが大切だと思う。そのためには、地道につながっていくことが必要」と話してくださいました。

最後にマーロンさんがまとめました。
「日本のような大きな社会で地域社会を作るのは大変だと思います。自分はトリニダード・トバゴという小さな島国出身だからこそ、色々な人とつながるのが得意なのかもしれません。(注釈・トリニダード・トバゴは愛知県ほどの面積の国です)

人々はもっと素直になることが大切なのではと感じています。自分が心地よいと感じるスペースの中で自分が満足できることをすればよいのです。例えば、母国のトリニダードのマスキャンプで、コスチューム作りは苦手だけれど、料理は得意という女性は、皆のために料理を作ってくれました。そんな風に自分の得意なことで地域とのつながりが感じられる、マスキャンプがそんな場所になることを願っています。一つ一つのことは小さなことかもしれませんが、そういった献身が、コミュニティを作り上げるのには大切なのではないでしょうか。
また、今回の鶴舞公園パレードプロジェクトは「マーロン・グリフィスのプロジェクト」と言われますが、私はそうは思っていません。これは我々の、Our Projectだと思っています。Let’s make the best of it. 一緒にいいものを作り上げましょう」

参加者からは「自分の考えを話せたとともに、他の皆さんとそれぞれの立場での価値観や考え方を共有できたことは大変学びになった」などの感想が聞かれました。
地域を思い、未来を描くことは今を生きる私達の在りようから始まる、そんなことを感じさせる鶴トークとなりました。ご登壇くださった皆様、ご参加くださった皆様、本当にありがとうございました。



